庭と店の境界をなくせば互いがよりひろがっていく

呉服屋「沼津つむぎや」は、静岡県沼津市の中心街にある。建築家の今永和利さんは、単に着物を買いに来るだけではなく、着物を着た人たちが茶室やサロンでくつろげる場所で、さらにこの町のシンボルとなるような建物を目指した。着物が映え、そこに来る人たちが華やかに見えることを考えて、インテリアはシンプルに。1階は洋風でモダン、2階は対照的に伝統的な和の空間である。
庭は1階店舗に面した北西に位置している。庭の広さは約10坪で、土地の条件でここには建物が建てられない。ならばぜひ和風の庭としていかそうと、今永さんは提案したのである。北側の庭は日当たりの心配があるが、ここでは店内から庭を見たときに逆光にならないという利点をいかした。京都から運んだソメイヨシノと、伊豆のモミジと笹が、ごく控えめに配置してある。全体的に明るい印象なのは、白い玉砂利を敷いているからだろう。造園は沼津の御用邸にも関わった浅宮義和さんが手がけている。波を打つような竹垣も美しい。この竹垣が描く放物線は、螺旋階段のそれと同じ。このような仕掛けが、空間をつなげている。それが見事に成功している。
庭と店に境界をつくらず、店の一部のように考えて設計した。折戸を開け放てば、それこそひとつながりである。


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